兄ちゃんは超能力者

わたしが小学生だった1970年代、世は超能力ブームでした。テレビの特番があれば、いつも兄弟3人、かじりついて見ていました。ある日、世界屈指の超能力者、ユリ・ゲラーがブラウン管の向こうからこう語り掛けます。「みなさん、いらないスプーンや、壊れた時計を持ってきてください。私がテレビ越しにパワーを送ります」。兄弟3人、言われるままに台所から(いらないわけがない)スプーンを持ってきて、「曲がれ!曲がれ!」と必死に念じます。長男である私は当時、弟たちに対して、完全無欠の兄であることを演じていたような気がします。そう、兄貴は完璧でなければいけないのです。そこで私がとった行動は、手でスプーンを隠して、「ふんっ!」と力任せにか弱いティースプーンの柄を曲げたのです。完全無欠の兄は、超能力も発揮しないといけないのです。「兄ちゃんすげー!」と大騒ぎする弟たちと、なんともいえない表情の両親…。長男であることのプレッシャーと少しのウソをつきながら、私の人格が形成されていったのは言うまでもありません。兄ちゃんはつらいよ。

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