その言葉、誰に届けますか? 地域を売る“ひと言”とは
ライナーは本年度、旭川市ふるさと納税返礼品のマーケティング業務をお手伝いしています。マーケットが全国なので、日ごろ地元に向けて発信していたコピーのセオリーを見つめ直す必要があります。
「北海道産というだけで売れると思ってました」。ふるさと納税の返礼品に関わるある生産者さんの言葉です。東京の百貨店で大人気の商品を旭川市のふるさと納税返礼品にしたところ、意外にも反応はいまひとつ。理由は明確でした。「都会目線のコピー」が、そのままでは全国の地方都市の人や、北海道を想う寄附者の心に響かなかったのです。
ローカルで刺さる言葉とは何か。答えの一つは「地名の重み」にあります。たとえば「北海道産の米」より、「大雪山のふもと旭川・東鷹栖で穫れた、ふっくら甘いゆめぴりか」の方がイメージが具体的で、圧倒的に目に留まる。地元の人から見れば当たり前の地名も、外から見れば「どこかの誰かが、大切に育てた」と感じさせる要素になるのです。
実際には、流通の仕組みの関係で、100%旭川産ではない場合、北海道産とすることもありますが、ふるさと納税の本来の意義に沿えば、旭川を想ってくれている人に刺さるコピーがベストと言えます。
「旬は、待ってくれない。とろける甘さ、旭川メロン」というコピーがあります。もともとは、北海道産メロンのおいしさを伝えることに主眼を置いていたのですが、旭川という地名と、期間限定感を押し出したことで寄附数が増加しました。
つまり、伝えるべきは味や機能だけではなく、「地域の背景」と「感情に触れる一言」。都会的な洗練よりも、旭川らしさに自信をもって語ること。それが、地域マーケティングの第一歩です。
参与 秋野