こだわることに、こだわりすぎない
通勤中に聴いているラジオ番組で紹介されていた『三省堂国語辞典から消えたことば辞典』を読みました。昭和~平成のことばから様々な事情で辞書から「消えた」単語が収録されているのですが、エムディーやコギャル、ファミコンなどが消えてしまったことには、リアル世代としてちょっぴり切なさを感じました。言葉は生き物と言われることもある様に、時代とともに使われなくなったり、使われ方が変わったりする言葉もたくさんあるな、としみじみする一方、日々さまざまな広告を目にしていてつい気になる単語の一つが『こだわり』です。
そもそも、こだわるという動詞は本来、些細なことに心がとらわれて必要以上に気を使うという、良くない方の意味を持つ言葉でした。それがいつしか、細部にまで気づかいを行き届けるという良い方のニュアンスでも使われるようになり、店主こだわりの○○といったコピーを目にする機会がちらほら。たった一言でちょっとした特別感を演出できる使い勝手の良さは分かりますが(かくいう私もむかし使ったことがあります…)、単語そのものが持つ訴求力は今日び底をついているようにも思えます。
では何に対してそんなにこだわっているのか。確固たる経営理念を持つことや、よりよい商品やサービスを提供するために素材を吟味する・技術を追求するといったことは、事業を運営するのであればある意味当然の姿勢であり、消費者が知りたいのはその具体性。それを「こだわり」の一言で括ってしまうのはとてももったいなく感じてしまいます。 私たち広告の作り手側もそういう便利な決まり文句に頼りすぎず、コピー1つに「こだわり」を持って宣伝のお手伝いをして行けたらと思います。
広告部 大西