時を経て語り出す紙面を目指して

旭川で初めて写真館を開業した写真師の中鉢直綱(1879~1961)が明治から昭和にかけて撮影した旭川の写真展が先日、市内のギャラリーで開かれました。

旭川出身の写真家・谷口雅彦さんの企画で、中鉢が従軍した日露戦争や、明治~昭和の旭川の街並みが収められた写真約80点が並んでいました。この写真展を通じて、何を伝えたいのか。取材で投げかけた質問に谷口さんは「写真は、時間が経つことで様々なことを語り出します。記録を未来に残す大切さを感じてもらえれば」と答えました。たしかに、市民から寄贈された写真などは、普通なら家族でなければ何てことのない一枚ですが、そこに時間というフィルターがかかることで、昭和の空気感と共に様々なことを語りかけてきました。

写真展を見て、過去に取材した地元のアマチュア写真家とのエピソードを思い出しました。それまで撮りためた作品をまとめた写真集の取材で、ぱらぱらと何気なくページをめくっていくと、見覚えのある一枚に目がとまりました。それは私の母と弟、妹が3人でピクニックをしている一枚でした。写真家の方に聞くと、職場の近くで、ふと目に留まった家族が幸せそうだったので思わずシャッターを切ったとのことでした。すぐに母に連絡して、その写真を見せたところ、驚きと共に懐かしそうに当時のことを話してくれました。母はこの写真集を2冊購入して今も大切に保管しています。

ライナーは来年創刊40年を迎えます。会社には創刊時から最新号まで、すべての号が製本されて保管されています。昔の紙面からは昭和の時代の熱気や、生まれて間もないライナーが独り立ちしようと必死にもがく姿が伝わってきます。私たちは、これからも地域の時代を映す紙面をていねいにお届けしたいと思っています。

広告部 秋野

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